きのこに“言語”がある?菌糸ネットワークの秘密をやさしく解説
「きのこに“言語”がある」と聞くと、不思議に思いませんか?
でも近年の研究では、きのこの菌糸が電気信号を使って情報を伝えていることがわかっています。
土の中に広がる菌糸ネットワークは、まるで森全体をつなぐインターネットのよう。
今回はそんな「きのこの言語」や「マルチハイファルシステム」、そして世界最大の生き物としての驚きの姿まで、やさしく解説します。
🍄 菌糸とは何か?
きのこの「菌糸(hypha)」は、土の中を張り巡らす糸状の細胞です。
無数の菌糸が集まって「菌糸体(mycelium)」を作り、栄養を吸収したり、他の生物と情報をやり取りする重要な役割を果たします。
菌糸ネットワークは、土壌の健康を支える隠れた主役なのです。
🍄 きのこの「言語」ってどういう意味?
人間のように声を出すわけではありませんが、菌糸は電気信号を使って情報を送っていることが研究で観察されています。
イギリスの研究者アンドリュー・アダマツキーは、菌糸の電位を測定し、約50種類の繰り返し出るパターンを発見しました。
これを人間の「単語」に例え、「きのこは電気スパイクのパターンで情報をやり取りしているのでは?」と提唱しています。
例えば「栄養源がある」「危険が迫っている」といった情報を伝える“会話”をしているのかもしれません。
🍄 マルチハイファルシステムとは?
菌糸は1本で動くのではなく、無数の菌糸が協調しながら情報を処理するネットワークを作ります。
これを「マルチハイファルシステム」と呼びます。
- 分散的に情報を処理
- 全体で連携して行動を決める
- 部分が傷ついても別のルートで栄養を運ぶ柔軟性
まるで人間の神経回路やインターネットのような仕組みで、森全体の生命活動を支えています。
🍄 ウッドワイドウェブ:森をつなぐ地下ネットワーク
菌糸は単に土の中をはうだけでなく、樹木の根と結びつく「菌根菌(mycorrhizal fungi)」としても機能します。
菌根菌は木の根と共生し、複数の木々を地下でつなぐネットワークを形成します。
「ウッドワイドウェブ」とも呼ばれるこの仕組みでは、木同士が
- 栄養を融通し合う
- 病害情報を共有する
など、まるで森全体が一つの生命体のように連携しています。
🍄 🌟 世界最大の生き物はきのこ?
菌糸ネットワークのスケールは想像以上です。
実は「世界最大の生き物」とされるのもきのこ(オニナラタケの菌糸体)です。
- アメリカ・オレゴン州で発見されたオニナラタケ
- 約9平方キロメートルにわたって広がる単一の遺伝的クローン。これは東京ドーム約193個分の面積に相当します。
- 重さは数百トン、推定樹齢数千年
このように、菌糸ネットワークは単に小さな糸ではなく、森を覆うほどの巨大な生物体として生き続けています。
🍄 私たちへのヒント
菌糸ネットワークの仕組みは、人間社会にも学びを与えてくれます。
- 分散型ネットワーク設計
- 資源の持続可能な共有
- 柔軟で回復力のあるシステムづくり
自然界の仕組みを理解することは、私たちの社会をよりよくするヒントにもなるのです。
🍄 まとめ
きのこの世界は、見た目以上に奥深く、不思議で知的です。
電気信号で情報を伝える「きのこの言語」、無数の菌糸が協調する「マルチハイファルシステム」、そして森全体をつなぐ「ウッドワイドウェブ」。
さらに、世界最大の生き物としてのスケールも持つ菌糸ネットワーク。
ちょっとマニアックな話題ですが、自然の仕組みを知ることで私たちの生き方を見つめ直すヒントが見つかるかもしれません。
原木しいたけを愛するだけではなく、学術的なことも言える、篠崎 輝武(しのざき てるたけ)でした。
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