
皆さま、本日ご紹介いたしますのは、ちょっと意外な“名前負け”動物、ニホンカモシカでございます。
里山の奥深く、朝もやの中にひょっこり現れるその姿は、まさに“自然の隠者”。
名前に「シカ」とありますので、てっきり奈良公園あたりにいるような鹿さんの仲間だとお思いの方も多いかもしれません。
けれども実は――
カモシカは、シカではございませんのよ。
なんと彼らの正体は、ウシ科の動物。
つまり、分類学的には、ヤギやヒツジ、ウシに近いグループなのです。
「カモシカのような足」は、実際には…
「カモシカのような細くしなやかな足」といえば、美しい女性の脚のたとえによく使われますが、実際のカモシカさんの足は、
案外、がっしりとしていて、筋肉質。山岳地帯を駆け回るには、見た目より足腰が物を言うのでございます。
また、毎年生え変わる鹿の角とは違い、カモシカの角は短くて黒く、年中そのまま。
これもまた、シカではなくウシ科である証しのひとつです。
「シカ」と名乗る理由は?
では、なぜ「カモシカ」と呼ばれるようになったのか――
どうやらその由来は、中国の「羚羊(れいよう)」という漢字にありそうです。
もともと「山岳にすむシカっぽい草食動物」というざっくりした分類名だったものが、
日本ではそのまま**「カモシカ」として定着**してしまったようなのです。
静かなる存在感
ニホンカモシカは、日本の特別天然記念物にも指定されており、
普段は山の斜面などにひっそりと暮らしています。
けれどもときどき、人里近くに現れては畑でのんびり草を食べている姿が話題になることも。
そのマイペースな佇まいに、「ほな、気ぃつけて帰りや」と声をかけたくなる、どこか憎めない存在です。
出典・参考資料:
- 国立科学博物館「ウシ科動物の分類とニホンカモシカ」
- 環境省『特別天然記念物ニホンカモシカの生態と保護』
- 『動物分類学ハンドブック』(東京大学出版会)
コメント